
借入を複数の金融機関や消費者金融から行って、返済できなくなってしまった。カード払いの支払い日までに口座に入金できそうにない。多重債務を抱えて、このまま行くと一家心中しかない・・・。
今回は債務整理について、そのメリットとデメリットを見ていきたいと思います。
<この記事で分かることはざっくりこれ!>
- 債務整理すると多くのケースで最低5年間クレジットカードの発行ができなくなります
- 債務がチャラになるにつれてデメリットも大きくなります
- 安易に債務整理するとクレジットカードの発行や仕様ができなくなり不便になります
- 「弁護士費用>減らせる債務」という可能性もあります
- がんばってそのまま返済できるならばした方がいいです
債務整理はメリットばかりではない!デメリットもある

「債務整理で借金がチャラになるぞ!これはいい!」そう早合点してしまう人もいるかもしれません。
しかし、当然、それによるペナルティ、デメリットもゼロではありません。
代表的なものとしては、債務整理をすると、クレジットカードが発行できなくなるというものがあります。それ以外にもデメリットがあり、借金が減るというメリットばかりではありません。
債務整理といっても複数の方法があり、それぞれメリットとデメリットがあるのを理解してください。
そこで、以下では、債務整理の種類ごとにメリット、デメリットをまとめていきたいと思います。クレジットカード発行以外にもデメリットはあるのでしょうか?
債務整理のメリットとデメリットを種類ごとに解説
任意整理のメリットとデメリット

裁判所などを通さず、法的決定ではなく、当事者同士で話し合って、支払利息を減らしたり、返済期間を延ばしたりする方法です。
契約行為は私人間の同意で成立するので、相手がOKならば当初の契約から変更してもいいのです。交渉に成功した場合、返済が楽になります。弁護士を通して交渉してもOKです。
- 特定の債権者(業者)だけを選べるので、クレジットカード会社の契約はそのままにできるケースがある(クレジットカード支払いは任意整理しない)
- 交渉に成功すれば過度な取り立てはなくなる
- 元金が減る可能性もある
- 財産の差し押さえがない
- 官報や裁判所へ公示されることがない
- したがって家族や会社にバレない
- ブラックリストに載る。5年~10年程度、新規のクレジットカードの発行や、新規の借入ができなくなる
- 元金が減らない場合、完済まで返済をし続ける必要がある
- 金融機関や消費者金融が交渉、示談に応じないケース、交渉が決裂するケースもある
- 安定した収入が必要になる(安定した収入がない人と交渉の余地はない)
当事者間で話し合うので、法的決定がなされるわけではなく、「公示」(裁判所等に貼り出される)こともありません。今持っているクレジットカードは引き続き使えるかもしれませんが、条件変更したことは信用情報機関に連絡されますので、新規のカード発行は最低5年できなくなります。
個人再生のメリットとデメリット

債務者が裁判所に申し立てることによって、債務(返済額)を大幅に圧縮して減額され、それを3年で返済していく方法です。
全部借金をチャラにはできませんが、個人の基盤再生を支援するために、「減らしたからそれだけはがんばって返してよ」と法律で応援する制度になります。
- 1500万円未満~500万円の場合⇒5分の1
- 500万円未満~100万円の場合⇒100万円
まで借金が減ります。
逆に100万円未満の借金はこの制度を使うことができません。100万円なら3年あれば何とか返せるでしょうという判断です。
- 借金が大幅に減額される(下限100万円)
- 取り立てが全て止まる
- 借金に至った経緯は問わない
- 土地、建物などの財産を差押えられることはない
- 自己破産ほどの社会的制裁、負の烙印にならない
- ブラックリストに載る。5年~10年程度、新規のクレジットカードの発行や、新規の借入ができなくなる
- 持っているクレジットカードはすべて止まる
- 官報や裁判所に公示され、家族、友人、第三者にバレるかもしれない
- 安定した収入が申立には必要(安定した収入がないと申立できない)
- 個人での手続きを行うのは非常に難しく弁護士等に依頼することが不可欠(依頼料が数十万円単位でかかる)
弁護士が中に入って、裁判所の決定で借金を大幅に減らすことができます。破産ではないので、減った債務を返し続けることが大切です。破産ほど社会的な負の烙印を押されることもなく、チャラにしたのではなく返済したという実績になります。
クレジットカードについては信用情報に傷がつくので、5年単位であきらめることになります。
自己破産のメリットとデメリット

債務整理の中では一番知られています。文字通り破産して、一切の債務借金をチャラにする決定を裁判所に行ってもらいます。本当にすべての借金(の返済義務)がなくなるのですが、それだけに失うもの、デメリットも大きいです。
「お金に換えられるものはすべて換えてそれでも返せないから破産します」という決定なので、所持している土地や建物を差し押さえられ、競売(売ってお金に換える)にかけられてしまいます。
生活必需品や当面の生活費以外はすべて失って、借金を帳消しにして助かるという、「メガザル」(ドラクエ)というか「ロクトフェイト」(Wizardry)のような最後の手段です。
- これまでの借金がゼロになる、なくなる
- 取り立てが全て止まる
- 借金に至った経緯は問わない
- 収入がなくても、無職でも手続きができる
- ブラックリストに載る。5年~10年程度、新規のクレジットカードの発行や、新規の借入ができなくなる
- 持っているクレジットカードはすべて止まる
- 借地借家(アパートを借りる)など新規の契約の際にバレれば契約できないかもしれない
- 官報や裁判所に公示され、家族、友人、第三者にバレるかもしれない
- 持っている換金性のある財産はすべて差押えられる(公権力によって強制的に売却させられる)
- 差押えがあれば家族や友人にはバレる
- 個人での手続きを行うのは非常に難しく弁護士等に依頼することが不可欠(依頼料が数十万円単位でかかる)
- 「破産者」という社会的な烙印を押される
デメリットが他の債務整理とは段違いに多いですね。もし自己破産した人だとバレれば、世間の視線は非常に厳しいものになります。
有名になった「破産者マップ」のようなものがまたできるかもしれません。まるで性犯罪者のように見る人もいます。実際に刑に服したわけではありませんが「前科者」として見られるケースもゼロではありません。
財産も多くを失います。本当に最後の手段であり、借金がなくなる代わりに失うものも非常に大きい、と肝に銘じてください。クレジットカードが作れないだけではないので、安易に取るべきではなく、自己破産する前に任意整理や個人再生で何とかするべきです。
過払い金請求のメリットとデメリット

「グレーゾーン金利」という言葉を聞いたことはありませんか?
グレーゾーン金利とは「違法だけど罰することができない金利」で、法のすき間をかいくぐって悪質業者が設定していた金利になります。
実は、
- 利息制限法:金利上限は15%~20%(融資額元本等に応じて)
- 出資法:2010年までは上限29.2%で、それ以上の金利を取る罰則
というものがありました。
つまり、300万円借りた場合、
- 利息制限法の上限金利:15%
- 出資法の上限金利:29.2%
だったので、例えば、25%で貸しても罰則がなく、利息制限法は努力義務のようなものでした。この15%~29.2%の間が、罰則がない違法状態、「グレーゾーン金利」と呼ばれていました。このグレーゾーン金利によって、利息の支払いで人生を壊される人が相次いだため、出資法の金利が利息制限法に合わせて引き下げられました。
過払い金請求は、2010年以前に借りたグレーゾーン金利の部分の利息を取り戻す方法です。これにより、支払利息が減り、現金が戻ってきて多少楽になります。
個人ではさすがに難しいので弁護士に依頼することになります。
- 過払いの利息が返ってくる
- キャッシュが手元に入る
- 過払い利息と相殺して、返済中の借金がチャラになるかも
- ブラックリストに載らないケースが多い
- 完済した日から10年経過した借金は時効になり戻ってこない
- 弁護士費用の方が回収できる過払い金よりも高額になるかも
- キャシングのリボ払いの過払い金請求したクレジットカードはもう使えない
出資法が改正されたのが2010年なので、それ以降のローンについては、おそらく利息制限法の金利で行っています。したがって、改正出資法施行(2010年6月18日)以前の契約でグレーゾーン金利が設定され、完済して10年経過していないものに限ります。
今からさかのぼり10年前の2009年8月か9月に完済していると、過払い金を請求できません(完済日なので「契約日」ではありません)。
完済後に過払い金請求した場合や、過払い金請求によって債務が相殺されゼロになった場合、ブラックリストへの掲載はありません。しかし、過払い金請求してもなお債務が残ってしまった場合は「債務整理」扱いになり、ブラックリストに掲載されてしまうので注意が必要です。
以上、債務整理の各方法について説明しました。以下がそれをまとめた表になります。
任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | 過払い金請求 | |
---|---|---|---|---|
内容 | ・当事者間の話し合い ・利息の免除や返済回数増 |
・裁判所に申し立てる ・債務の圧縮、減額 |
・裁判所に申し立てる ・債務の完全免除(チャラ) |
・弁護士を通して請求 ・グレーゾーン金利の払戻 |
メリット | ・クレジットカードそのまま ・差押えがない ・元金が減るかも |
・借金が減る ・差押えがない ・社会的烙印を押されにくい |
・借金がゼロになる ・取り立てがなくなる |
・過払い金が返還される ・手元に現金が入る ・借金が相殺されるかも |
デメリット | ・完済まで返済が必要 ・交渉力が必要 ・交渉決裂のリスク |
・クレジットカード全て停止 ・弁護士等への依頼料が必要 |
・クレジットカード全て停止 ・弁護士等への依頼料が必要 ・差押えがある ・社会的に烙印を押される ・借入、カード以外にも悪影響 |
・完済日から10年経過で時効 ・弁護士等への依頼料が必要 |
ブラックリスト掲載 | 掲載される | 掲載される | 掲載される | 掲載されない(例外あり) |
官報への掲載 | 掲載されない | 掲載される | 掲載される | 掲載されない |
家族友人バレ | バレにくい | バレにくい | バレやすい | バレにくい |
安定収入 | 必要 | 必要 | 不要 | 不要 |
クレジットカード発行 | 5年~10年できない | 5年~10年できない | 5年~10年できない | できる (「債務整理」にならない場合) |
クレジットカードキャッシングと利息

「債務」「支払い利息」(返済義務のある借入や利息)というと、銀行や消費者金融からの借入やカードローンを思い出しますが、クレジットカードのショッピングやキャッシングも債務整理の対象となる支払利息になります。
一括返済の場合、口座にお金があれば債務はすぐになくなるわけで、問題ありませんが、リボ払いの場合金利が高く返しきれない可能性が出ます。
ショッピングの場合、リボ払いであっても、商品を実際に買うわけで、借入やそれに伴う利息にはなりませんが、債務整理する場合、買ったものの返品を求められることもあります。
また、クレジットカードを使ったキャッシングの場合、お金を借りるわけで、銀行等からの借入と同じ構図となり、返せなければ債務整理の対象になります。10年以上前のキャッシングでは利息制限法を超えた「グレーゾーン金利」のキャッシングも存在していました。
クレジットカードと利息はこういうイメージでご理解ください。なお、該当するクレジットカードの債務整理をした場合、少なくともそのカードは使えなくなります。
クレジットカード | ショッピング | キャッシング | |
---|---|---|---|
一括払い | リボ払い | リボ払い (一括返済でも当日でなければ利息発生) |
|
任意整理 | 返済できるので関係ない | できる | できる |
個人再生 | できる | できる | |
自己破産 | できる | できる | |
過払い金請求 | できない | できる |
クレジットカードを発行できないリスクは高いのか?
以上、各債務整理についてまとめましたが、タイトルにある「クレジットカードを発行できなくなるリスク」は以下の通りになります。
- 自己破産⇒きわめて高い+カード以外も契約に支障が出る
- 個人再生⇒きわめて高い
- 任意整理⇒高い
- 過払い金請求⇒低い(ただし、請求清算後債務が残った場合は信用情報に×が付きリスクが高くなる)
債務整理のメリット・デメリットとクレジットカードを発行できなくなるリスク まとめ
- 債務整理といっても4種類あり違いを理解する
- 債務整理すると過払い金請求以外の多くのケースでクレジットカードの発行ができなくなる
- 債務整理はメリットばかりではなくデメリットも大きい
- 債務をなくす(自己破産)、減らす(個人再生)は特にデメリットも大きい
- 社会的信用を無くし「犯罪者」の烙印を押されるケースもある(実際には犯罪ではないが・・)
- 信用情報に×が付き、ブラックリストに載るとクレジットカードの使用や発行ができなくなる
- 銀行や消費者金融からの借入以外にも、クレジットカードのキャッシングの返済(リボ払い)も債務整理の対象となる